「電解コンデンサの寿命」で解説したように、電解コンデンサは各種オーディオ機材の入力電源部で交流を直流に平滑(変換)するために使われることが多いわけですが、では何故、もっと特性の良いフィルムコンデンサやセラミック系のコンデンサを使用しないのでしょうか。
それはいたって簡単な答えなのですが、電解コンデンサの特性、特徴として、大容量のものを作りやすいということがあげられます。逆を言うと信号部分で使われるようなフィルム系やセラミック系のコンデンサは、大容量化が難しいわけです。 これはおそらく、世の中に電気という便利なものが発見された頃、高周波がうんぬん、ノイズがうんぬんという問題が話として必要ない、議論にもならない時代背景にあったのではないでしょうか。とにかく直流を安定化させる必要がある、電気を多少なりとも蓄えておくものがあれば!という必要性があったからだと思います。
さて少し脱線しましたが、商用電源(一般家庭の電源)はその周波数が50/60Hzと低く(電気的には低周波の領域です)、直流に変換しその電圧を維持するためには大容量のコンデンサが必要となります。
一方、電解コンデンサは高周波に対するインピーダンス※1が高く、高い周波数成分を吸収するのが苦手です。つまり、高い周波数成分を含むノイズを減衰させることが不得意なのです。それゆえ、突発的なサージやインパルスに対する吸収能力が低くなります。こちらは高周波特性に優れたフィルム系コンデンサやセラミック系コンデンサに譲るということになります。
最近は電解コンデンサでも比較的高周波特性が優れたものが製品化されており、消費電力の小さい回路向けにノイズ減衰用のセラミックコンデンサなどを省いた形で使用されたりしています。(弊社でもインバータのドライブ回路などに利用しています)しかし、大容量、高電圧のものは未だ従来の電解コンデンサが使用されています。